シープロ9.8馬力の整備 -キャブレターのオーバーホール 2-
警告!!このページはマニュアル等を参照した整備の模範的要領ではなく,自分の行った自己流整備の記録です。船外機の整備ミスは命に関わるという事を忘れずに,できるだけプロに任せる事を強くお勧めします!このサイトを参考にした結果による,いかなる事態にも責任は負えません!
キャブレターのオーバーホール1からの続き。一番最初のページ(船外機から外す要領)から見たい場合は「キャブレターの取り外し」へジャンプしてください。
キャブ本体側はフロートが外れ,シンプルな状態になった。次は,メイン・ジェットを外していこう。
メイン・ジェットはマイナスドライバーで外していくが,長期間緩めてなかったりすると結構硬くて緩めるのが大変なことがある。
メイン・ジェットは恐らく真鍮製?で比較的柔らかく,しかもドライバーが掛かる面積が小さいため,工具に慣れていない人などは要注意。ナメてしまうと緩められなくなってしまうので気を付けよう。
外したメイン・ジェットをチェック。
スロットルを開けたときの燃料はメイン・ジェットの中心に空いてある小さな穴を通ってエンジンに供給されるため,この穴が汚れて径が小さくなってしまうとアクセルを開けたときの燃料が少なくなってしまい,息つきや出力不足などのトラブルが発生する。
穴に異常が無くても清掃する予定だが,清掃前の状態を確認しておくことが非常に重要だと思う。
今回は,穴の径が小さくなってしまうような不具合は無かった。
続いて,キャブ本体のメイン・ジェットが付いていた穴の奥に「メイン・ノズル」があるので取り出す。
キャブ本体のノズル側を下にしてキャブ本体を地面にコンコンすると,メイン・ノズルが出てくる。キャブ本体はアルミ製のため,傷がついたりしないようにウエスなどで衝撃を和らげよう。
定期的に清掃していると簡単に出てくると思うが,長期間外していなかったり汚れが付いていると,これでは落ちてこないこともある。その場合は,まずはキャブ・クリーナーなどを浸して固着を取り除いてみよう。
メイン・ノズルが出てきた。上下の向きがあるので覚えておこう。横に大きな穴が空いている方が下側(メイン・ジェット側)になる。
釣行回数が少ないのでメイン・ノズルも綺麗だねー。
続いて,低速領域の燃料供給量を調整するスロー系統を分解していこう。メイン・ジェットが付いていた場所の隣になる。
まずは,ゴムキャップを外す。
手で簡単に外すことが出来る。劣化などで取り付けが緩い場合は,交換した方がいいだろう。
次に,ゴムキャップが付いていた場所の奥に「スロー・ジェット」があるので取り外す。
メイン・ジェットと同じようにマイナス・ドライバーで外していくが,こちらは小さいジェットのため細いマイナスが必要。
スロー・ジェットが外れた。メイン・ジェット同様,中心の小さな穴が低速での燃料を供給する重要な役目をしている。
低速域での燃料供給量は非常に少ないため,メイン・ジェットと比べると非常に小さな穴になっている。
続いて,側面にある金属のプレートを外してみる。
外れた。
プレートは表と裏があるが,ボルトの位置から考えると,向きが分からなくなることは無さそうだ。
プレートが外れたら,キャブ本体側に黒いゴム部品があるので取り外してみる。
ゴムのフタみたいな部品を外した状態のキャブレター本体。
小さな孔が見える。後ほどキャブクリーナーで清掃する。
ここまで外した部品。外した順番に整理しながら作業していく。
一部の部品がプラスチック製のケースに入っているが,プラ製だとガソリンやキャブクリーナーでケースが溶けたりする場合が多いので,基本的には使わない方がいい。特にキャブクリーナーが付着すると,材質によっては数分程度で溶けてきて,部品に付着してしまうので気を付けよう。
外した細かい部品をキャブクリーナーで清掃していく。キャブクリーナーは刺激性が高く,特に目に入ると強烈な激痛が走る。また,皮膚に付くと体質によっては何からの不具合が出る可能性があるので注意。キャブの清掃作業は狭い場所にスプレーすることが多いため,スプレーしたときに跳ね返ってくることがあるので気を付けよう。
フロート・チャンバを利用して,細かい部品を入れてキャブクリーナーに漬け込むと,細かい部品とチャンバ内を同時に清掃できる。
メイン・ジェットやスロー・ジェットなどの小さな孔にも浸透するように,しばらく漬け込むと効果的。
…あ,ゴム部品はキャブクリで溶けたりはしなかったが,キャブクリ清掃はしない方がいいかもしれない。本来はオーバーホール時に新品交換ね。
細かい部品を漬け込んだら,フロートを一番上に乗せてキャブクリーナーを掛ける。
漬け込みが終わったら,フロート・チャンバのドレーン・スクリュ(ドレーン・ボルト)を緩めてキャブクリーナーを排出する。こうすると,ドレーン周辺にもキャブクリーナーが掛かって綺麗になると思う。
外したドレーン・スクリュ。スクリュからの燃料漏れを防ぐガスケット(金属ワッシャ)があるので無くさないようにしよう。
若干の腐食が見られるが,これくらいなら私は真鍮ブラシなどで清掃して再使用するが,滅多に分解しない人はこういったタイミングで新品にした方がいいと思う。
続いてはキャブ本体側の点検・清掃をしよう。
特にエンジンの調子が悪くないときの定期清掃作業の場合は入念にチェックする必要は無いかもしれないが,エンジン不調などでキャブを分解している場合は十分に確認してから清掃していきたい。清掃してから確認すると,綺麗になっているため不具合の原因がつかみにくくなり,直ったかどうかの手応えが無いまま組付け作業をするようになってしまう。
まずはチョーク・バルブ周辺の状況を確認。バルブを開閉させて,各部をしっかりと確認する。ちなみにチョーク・バルブを開閉すると3段階の位置で止まる構造になっている。
こちらは2つ目のバルブ「スロットル・バルブ」側だ。スロットルを操作すると,このバルブが開閉するようになっている。
こちらのバルブはリンクを操作して開いた後にリンクから手を離すと,スプリング力で全閉位置に戻るようになっている。
周辺に不具合が無いか,しっかりと確認する。
キャブ点検の中で特に重要なのは「各部の穴(孔)」を点検することだ。
キャブ本体と周辺の部品には小さな穴が沢山開いている。これらの穴のほとんどが「燃料」または「空気」の通り道となっているため,ここが詰まってしまうとエンジンに入る燃料か空気の量が変わってしまい,エンジンが掛からなくなったり不調になったりする。
これは先ほどメイン・ジェットを外した時に穴の状態を点検したものだが,このように向こう側から光を入れることが出来る場合は穴の状態を確認するのは簡単だけど…。
このように,穴の先が暗い場合は内部の状況が非常に分かりずらい。
エンジン不調などで入念に点検する場合は,反対側から懐中電灯などで光を当てると見やすくなる穴も多いので,丁寧に点検しよう。
目視点検が終わったら,各部の清掃をしよう。
各部の穴の状態がエンジンの調子に大きく影響するため,穴の径が新品時と同じになるように清掃するというのが最も重要となる。
キャブクリーナーを全ての穴に吹き付けて,汚れを溶かしていこう。
当たり前だけど穴には入り口と出口があるので,キャブクリーナーを穴に吹き付けると,どこかの穴から出てくることが多い。このときに予想外の場所から勢いよく出てくるという事も多いので,自分側に跳ね返ってくるかもしれないので十分に警戒しよう。
どこからも出てこない場合は,そこは貫通穴ではないのか詰まっている可能性が高い。暫く漬け込んで,もう一度吹き付けてみよう。
先ほども書いたが,キャブクリーナーは刺激性が非常に強いので,目や傷口に入ると非常に痛いので気を付けること。
キャブクリーナーでの清掃のポイントは「キャブクリーナーに漬け込んで汚れを溶かす」ということを意識することだと思う。
キャブクリーナーを掛けたときにすぐ汚れが落ちる訳ではなく,じわじわ汚れが溶け出してくる。汚れが溶けるまで一定時間掛かると考えて,吹き付けてからしばらく放置するのが効果的なのだ。しばらく放置して汚れを溶かし,再度同じ場所に吹き付けたときに汚れが流れ出る,というイメージで清掃するといいだろう。汚れがひどい場合は,この作業を数回繰り返すこともある。
穴が詰まっているときや落ちにくい汚れがあるときは,漬け込んで放置した後に車屋さんなどで使っているエアーガンを使い,エアブローすると効果的だ。
穴が詰まっているときに穴を針金などでグリグリすると穴の径が変わってしまい,再起不能になることがあるので絶対にダメ。傷をつけないような柔らかものでグリグリしよう。私はやったことがないが,釣りで使うラインなどを使うのもアリかもしれない。
清掃後の部品を,いくつかチェックしてみよう。
これは「メイン・ノズル」だ。中心の穴は大きいが側面に小さな穴がいくつか開いていたので,全ての穴が問題ないことを確認した。
メイン・ノズルの中心穴を確認。
中心穴は大きいので詰まるという事は滅多に無いと思うが,汚れがあれば綺麗にしよう。
次に「スロー・ジェット」を見てみる。
「スロー」というだけあって,この部品はエンジン回転数がスロー,すなわち低速回転時(スロットル全閉~極小開時)に燃料をエンジンに入れるジェット。
スロットルを開けていない時にエンジンに送られる燃料は非常に少ない。したがって,燃料の通り道である穴の径は非常に小さい。なので,詰まりやすい。
低速時にエンジンの調子が悪い場合でスロー・ジェットが疑わしい場合は,特に中心に開けてある非常に小さな穴の状態を,しっかりと点検しよう。
穴の内部が詰まっていたり汚れがあったりすると,径が小さいため取り除くのが難しいことも多い。キャブクリーナーにしっかりと漬け込んで,できればエアーで飛ばしておきたい。
今回の点検では,特に問題なかった。
続きはまた今度…。