シープロ9.8馬力の整備 -キャブレターのオーバーホール-
警告!!このページはマニュアル等を参照した整備の模範的要領ではなく,自分の行った自己流整備の記録です。船外機の整備ミスは命に関わるという事を忘れずに,できるだけプロに任せる事を強くお勧めします!このサイトを参考にした結果による,いかなる事態にも責任は負えません!
船外機からキャブを外して単体になった状態から作業スタート。船外機から外す要領は「キャブレターの取り外し」を参照してください。
「キャブレター取り外し」からの続き。
船外機からキャブを外すとき,2本の長いボルトがキャブに通ったまま外したので,このボルトから外していこう。
エンジンとキャブの間にあったガスケットを取り外して…。
長いボルトを抜きながら…。
黒くて大きい部品「インテーク・サイレンサ」を取り外す。
ちなみにインテーク・サイレンサとキャブの間にガスケットのようなものは無い。
これでキャブ単体になった。
キャブを分解する前に,まずは外観から分かる部品を確認しておこう。
キャブの横についている四角い部品は,燃料タンクから燃料フィルターを通ってきた燃料が入り,キャブ内部へと送る「燃料ポンプ」だ。
この燃料ポンプはエンジンが掛かったときにエンジン内部の圧力変動によって動くように作られており,燃料タンク内の燃料をキャブへと送る働きをする。
プライミングして燃料タンクの燃料をキャブへ送ってからエンジンを掛けたあと,燃料タンクの燃料が船外機まで上がってくるのはコイツのおかげ。
今回の作業では,燃料ポンプの分解は省略しようと思う。
続いてスロットル・バルブのリンク。
こちらにはスロットルを全閉にしたときの初期位置を決めるボルト「スロットル・ストップ・スクリュ」が付いていて,このボルトを回すことでアイドリングの調整ができる。
したがって,キャブ分解時にこのスクリュを外したり回したりすると,完成後のアイドリング調整が必要となる。
極端に突き出し量が変わってしまうとエンジンが掛からなくなったり,掛かった後に回転数が極端に高くなってビックリ仰天になるので注意する。
今回の私の作業ではスクリュを動かさないで作業するが,作業上動かさなければならない場合はこのスクリュを動かす前に,スクリュの突き出し量を確認しておくといいだろう。
この突き出し量を分解前と同じくらいにして組み上げると,アイドリングの回転数が以前と近い状態になる。
続いては「パイロット・スクリュ」を確認しておく。このスクリュもスロットル・ストップ・スクリュ同様,動かしてしまうとセッティングが変わってしまうので注意だ。
このスクリュはスロットル全閉付近のときにエンジンへ供給される混合気の量を調整する機能を持つ。
通常の状態だとスクリュを時計回りに回して完全に締まった状態から,規定回転数だけ反時計回りに回して緩めてある。
この緩めてある回転数が分からなくなると以前と同じセッティングに戻せなくなるので注意しよう。
今回はパイロット・スクリュを外さないで作業する。
それでは分解していこう。
まずは分解前にキャブ本体の外装を綺麗にして,汚れが混入しないようにする。
パーツクリーナーで丸洗いする。
キャブ本体下部にある「フロート・チャンバ」を外したいのだが,外す前にチャンバに付いている「ドレン・スクリュ」を1発緩めておく。チャンバ単体になってから緩めるのが大変なため。
ドレン・スクリュを緩めたら,フロート・チャンバを外していく。プラスのビス4本だ。
フロート・チャンバを外していく。
このときにチャンバが内部の部品に干渉しないように注意しながら,垂直に上げていく。
外れた。燃料ポンプはチャンバ側に付いてきた。
本体側にある黒くて大きな部品が「フロート」。チャンバを外すときに,この部品に強い力を掛けないようにしたい。
フロート・チャンバの内部を確認する。
エンジンの調子が悪い時にキャブが原因である場合,チャンバの底に汚れが溜まっていたりすることがある。その場合はキャブを清掃するだけでなく,汚れの原因を探っていく必要がある。清掃してからだと分析が難しくなるので,清掃前の状態を十分に確認しておくこと。写真を撮っておいてもいいだろう。
前回のキャブ清掃から航行回数は多くなかったので,今回は特に問題なく綺麗な状態だった。
チャンバに付いている「フロートチャンバOリング」というゴム部品は,再使用不可部品なので新品を準備しておこう。
キャブ本体側は,こんな感じになった。
ここではキャブの構造についての説明は最小限にして,作業を進めていくことにする。
次は黒くて大きな部品の「フロート」を外していこうと思う。この部品はキャブ内の燃料が満たされてきたときに燃料入り口に栓をする機能があり,ピンのところを支点にして動くようになっている。
キャブ内の燃料は多すぎても少なすぎてもエンジンの調子に影響するため、絶妙なタイミングで燃料通路に栓をするように、繊細な調整がされている部品。なので,強い力を掛けないように注意する。
フロートのピンを固定しているビスを外していく。
このビスが外れると,ビスを除いて3つの部品が同時に外れる。
フロートがどこにも干渉しないように注意しながら垂直に持ち上げて外していく。
外れたフロートには,ピンと「フロート・バルブ(ニードル・バルブ)」がついてきている。特にフロート・バルブの付き方を覚えておくこと。油断して落下させてしまったら分からなくなる。
フロートに付いているフロート・バルブ。
フロート周辺が外れたキャブレター本体。
フロート・バルブをフロートから外していく。
フロート・バルブは金属製のクリップにはまっており,そのクリップがフロートに引っかかっている。
バルブとクリップは簡単に切り離すことができる。
クリップがバルブにはまっているところ。クリップを指で押さえ,バルブを引っ張ると簡単に外れる。
外すとき,フロートやバルブに強い力を掛けないように注意すること。特にフロートのクリップが引っかかっている部分は,少しでも曲がるとキャブ内の燃料の量(油面高さ)が変わってしまい,エンジン不調を起こしやすくなる。
フロート・バルブが外れた。クリップはフロート側に残っている。
フロート周辺の部品を並べておく。
特にクリップは紛失しやすいので注意。
キャブ本体側はフロートが外れ,シンプルな状態になった。次のページからは,メイン・ジェットを外していこう。